成年後見制度~老いても自分らしく生きるために

先日、第二東京弁護士会が主催する成年後見の研修に参加してきました。
成年後見とは、ご本人の判断能力が低下したときに、ご本人に変わって財産管理などをする人を裁判所が選任する制度です。介護保険制度と両輪となるもので、制度導入から15年が経過し、高齢者保護のための制度として定着しつつあります。私も成年後見人をしていますが、単なる財産管理にとどまらず、人の健康や命に向き合う仕事だと実感させられます。
連日報道されていますが、振り込め詐欺や送りつけ商法など高齢者をターゲットとした犯罪や悪質商法はあとを絶ちません。特定の親族が高齢者を囲い込んで食い物にしてしまうという話もよく聞きます。当然のことながら判断能力が低下していればいるほどこれらの被害に遭いやすくなります。そのような被害から高齢者を守るものとしても成年後見制度は大変有用な制度と言えます。
例えば、父親の判断能力が低下したのをいいことに長男が我が物顔に父親の預貯金を引き出して使っており、なんとかそれをやめさせたいが、自分が成年後見人になるのは角が立ちすぎる、ということもあると思います。そのようなときは、裁判所に父親の成年後見を申し立て、弁護士を成年後見人に選任してもらうということが考えられます。弁護士が成年後見人に就任すれば、ご本人(父親)の財産管理は全て弁護士が行いますので、長男は手が出せなくなります。事情によっては引き出した預貯金の返還を長男に求めることも考えられます。
また、将来自分の判断能力が低下した場合に備えて、予め信頼できる方に後見人になってもらうための契約をしておくこともできます(任意後見制度)。死後の財産処分を自ら決定できる遺言とともに、元気なうちに検討しておきたい制度です。
祖父母や父母、自分自身の判断能力の低下という問題は誰にでも起こりうることです。そうなった場合でもなるべくその人らしく生きるために、成年後見や任意後見を利用することを考えてみてはいかがでしょうか。
成年後見を申し立てたい、あるいは、任意後見契約を締結したいという方はもちろん、知識として持っておきたいから相談してみたいという方もお気軽にご連絡下さい。

弁護士 中田 貴