死者に関する個人情報とプライバシー

前回の私の投稿(平成27年9月9日の記事)ではマイナンバーについて書きましたが,最近見たニュースに関連して個人情報関連の記事をもう一つ。

 

先日,ニュースを見ていたら,最近,亡くなられた方の遺族からの依頼で,死者が生前使用していた携帯電話やパソコンのデータを復旧させ,その中身を遺族らに引き渡すサービスが人気を呼んでいるという特集をやっていました。

 

率直な感想としては,思い出をよみがえらせ,死者とのつながりを保ちたいというご遺族の気持ちはわかるものの,正直,自分が当事者となった場合を想像すると,(やましいことはないものの)自分の携帯やパソコン内のデータを自分のいないところで勝手に見られるというのには抵抗がありますが,全く気にならないという意見の方も多いようで,人によって意見が分かれるところのようです。

 

ところで,こうした死者の情報を遺族が見る行為については,既に保護対象となる権利者本人が存在しないため,法律的にはこの行為が死者本人のプライバシーの侵害となることはありません。

 

また,これと関連して死者の個人情報に関する法律上の扱いについてご説明すると,個人情報保護法においても保護の対象は「生存する個人」に関する情報とされているため,死者の個人情報は,同法によって保護される個人情報にはあたらないこととなります(その結果,遺族が死者のカルテの開示を病院に求めるようなケースでは,遺族であれば任意の開示に応じる病院がある一方,病院によっては死者の個人情報は同法で開示が義務づけられている個人情報にあたらないとの判断で,任意のカルテ開示には応じないところもあり,取扱が統一されていないようです。) 。

 

では,こうした死者の個人情報・プライバシーについては法律上何ら保護されていないかというと,虚偽の事実を示して行われた場合に限られますが,死者に対しても名誉棄損罪は成立するため(刑法230条2項) ,ご遺族の告訴によって名誉棄損罪が成立する余地はあります。

 

また,死者に関する情報の漏えい等によって遺族に損害を与えたといえる場合であれば,それは遺族に対する不法行為となるため,遺族が損害賠償を請求することは可能と考えられます。

 

現代は,インターネットの普及等によって,故人に関する情報も拡散しやすく,ご遺族が不当な被害を受ける危険性も格段に高まっているのではないかと思います。
そのような場合にも,早めに一度専門家にご相談頂ければと思います。

弁護士 横山 太郎