裁判所を通じた債務者口座の特定

裁判に勝ったが、相手方が任意に支払わず、結局賠償がなされなかった。このような事態は、日本の民事裁判実務において頻繁に発生しており、大きな問題となっておりました。もっとも、法改正により、今後事態は改善するかもしれません。

 

金銭の支払を命ずる勝訴判決を得た場合、債権者は、強制執行を申立て、債務者の有する財産から、強制的に回収を行うことができます。

しかし、債務者の有する財産の特定は、債権者がしなければなりません。これが債権者にとって重い負担となっておりました。

例えば、債務者の預金債権を差し押える場合、債権者において、金融機関名と支店名を特定しなければなりませんが、債権者は、通常そのような情報を知りません。そこで、金融機関に照会をかけて口座情報の開示を求めるのですが、以前は、金融機関は守秘義務等を理由に開示を拒むことが通常でした。

そのため、開示を拒まれた債権者は、預金債権から債権回収をすることができず、泣き寝入りせざるを得なくなっていたのです。

もっとも、近年、弁護士に依頼した場合には、弁護士会を通じた照会に応じる金融機関も出てきました。したがって、金融機関側にも照会に対応できる体制が整いつつあります。しかし、全ての金融機関が応じるわけではありません。

 

このような状況の下、法務省は、民事執行法を改正し、裁判所が金融機関に口座情報を照会して回答させる仕組みを導入する方針を固めたようです。金融機関は回答が義務付けられるため、従来のように、守秘義務等を理由に開示を拒むことはできなくなります。

法改正が実現すれば、強制執行による回収可能性が高まることはもちろん、預金の差押えを恐れた債務者が任意に支払に応じることも期待できるのではないかと思います。引続き、法改正について注視致します。なお法改正まで待てず、弁護士会を通じた照会についてご希望の方は、ご連絡下さい。

弁護士 平岡 広輔