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2015.09.16更新

 交通事故の解決において争いとなることが多い問題の一つが「過失割合」です。

 

 現在,訴訟,任意交渉問わず,交通事故の過失割合を判断する際,重要な役割を担っているのが,判例タイムズ社が発行する「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」と言われる緑色の本です。

 http://www.fujisan.co.jp/product/1281695978/b/1169424/

 

 この本は,交通事故専門部である東京地方裁判所民事第27部の裁判官が中心となって作成され,昭和50年の初版以来5度の改訂を経て,現在では,合計338ケースもの事故類型につき,基本的な過失相殺率・割合とその修正要素が記載された本となります。

 

 では,どうして裁判官が作成したこの基準が,訴訟・任意交渉の交通事故過失割合判断において重要な役割を担っているのでしょうか?

 

 交通事故は,日々,日本全国で津々浦々で発生しています。ある日,北海道と沖縄で全く同じ事故が発生したと仮定しましょう。何れも裁判になり,北海道のA裁判官は「0:100」と判断し,沖縄のB裁判官は「50:50」と判断しました。この結論をみなさんはどう思われますか?どこで事故に遭遇するかは選べません。裁判において担当裁判官を指名することもできません。各裁判官が独自の考えだけで過失割合を判断することになると,裁判が,まるで,くじ引きのように「当たり」に期待するような不安定なものとなってしまいます。

 

 そこで,全国的に交通事故事件が増加した昭和40年代以降,裁判所としては,裁判官が過失割合を判断する際の指針を示し,同じ事故については,日本のどこで起きた事故でも,どの裁判官が担当しても,同じ過失割合の判断がなされるよう整備する必要が生じました。その結果,作成された基準がこの本のもととなっているのです。

 

 また,過失割合に争いある全ての交通事故が裁判として裁判所に持ち込まれては,裁判所はパンクしてしまいます。そこで,訴訟となった場合に裁判所が用いる判断基準を公表することで,訴訟前の任意交渉においても,将来の訴訟に至った場合予想される過失割合を前提に交渉・解決されることを期待し,裁判官向けの基準を広く一般にも公表するに至りました。

 

 この本が示す基準が,以上のような経緯で作成されたものである以上,弁護士としても,これを無視することはできません。しかし他方で,基準を絶対的なものとしては扱いません。当事務所では,依頼者のお話しをお伺いしたうえで,当該基準ケースの例外に該当する余地がないか,仮に該当する場合でも,より有利となる事情が存在しないのかを見極め,依頼者の方が納得できる適切・妥当な過失割合での解決を目指しています。

弁護士 荒木 邦彦

 

 

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