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2015.10.30更新

 日産自動車、トヨタ自動車に続き、ホンダが、高速道路での追越しや先行車への追随などの機能を市販車に搭載する方針を決めたとの報道がなされました。海外においては、米ゼネラル・モーターズが、高速道路での自動運転機能を搭載した車両の発売を予定しており、米グーグルは、ハンドルやブレーキのない自動運転車を開発しているようです。
 このように、自動運転車の開発は世界的な潮流であり、そう遠くない将来、自動運転車が公道を実際に走行するものと思われます。

 

 しかしながら、自動運転車に対応した法令は、現在のところ整備されておりません。

 

 例えば、自動車の運転方法については道路交通法が規定しておりますが、人間が運転することが前提とされており、機械が自動運転することは想定されていません。そのため、機械による完全な自動運転を許容するのであれば、道交法を改正する必要があります。

 また、自動運転車には、事故の減少という効果が期待されておりますが、事故が完全に無くなることはないでしょう。自動運転車による事故が発生した場合、賠償責任を負うのが、自動運転車に情報を入力した人間なのか、自動車メーカーなのか、あるいはその双方なのかという点も、法令上明らかではありません。

 

 このように、法令が未整備であることに鑑み、警察庁は、平成27年10月15日、庁内に有識者を交えた検討委員会を設置すると発表しました。委員会には、刑法や行政法、工学などの専門家が参加し、法令上の課題や事故時の責任問題などが検討されるようです。

 

 自動運転車に関する法令の整備に関しては、引続き、その動向を注視したいと思います。

弁護士 平岡 広輔

2015.10.28更新

 近頃,「鉄道の駅構内においてキャリーバックを曳いていた者の歩行者に対する不法行為が認められた事例」という珍しい裁判例に接しました(判例時報2267号63頁)

 

 駅中や町中では,老若男女問わずキャリーバックを使用している人々をよく見かけます。

 キャリーバックは多くの荷物を少ない労力で運べる非常に便利な道具ですが,他方で,視界が及びにくい足下付近を移動するため,周囲の人にとっては見つけにくい物体であり,また,曳いている人にとっても,自身の視界外にバックが位置するため,どうしても注意が及びにくいという特徴があります。実際,キャリーバックに関連する事故が多く発生しており,国民生活センターにおいても,キャリーバック使用時の注意喚起等を行っているところです。http://www.kokusen.go.jp/kiken/pdf/294dl_kiken.pdf

 

 本件は,駅構内通路の曲がり角部分において,被告が曳いていたキャリーバックに,対向進行してきた高齢男性である原告が接触し転倒しケガを負ったとして,原告が,被告に対し,ケガの治療等を請求した事案です。

 裁判所はキャリーバックを使用した被告に対し「駅構内のような人通りの多い場所でキャリーバックを使用する場合には,曳いているキャリーバックが他の歩行者の歩行を妨げたり,それにつまづいて転倒させることのないよう注意すべき義務」があることを認め,当該注意義務違反の結果,本件事故が発生したと認定しました。

 他方,原告についても「歩行中は前方及び足下に注意し,特に駅構内のような通行人の多い場所では,対向の歩行者が大量の荷物を持っていたり,キャリーバックを曳いていることは当然予測できることである」として,本件事故における原告側過失割合を25%と認定しました。

 

 各歩行者が負う注意義務の内容は裁判例が示すとおりであろうと思います。ただし,本件判断における過失割合は,あくまでも曲がり角という視認性に問題ある場所での事故であることや原告が高齢者であることを踏まえた個別的判断であり,同種事故であっても,発生時間帯,通行量などの事故発生場所の客観的状況,キャリーバックの形状,各人の具体的歩行態様,被害者・加害者の年齢や身体的状況等によって,過失割合が大きく変わる可能性があります。この裁判をもって,直ちに,キャリーバック接触事故は,怪我をした歩行者の過失割合が低いのが当然と考えることはできません。この点,注意が必要です。

 

 なお,会社の営業マンが営業資料をキャリーケースに入れ営業先に向かう途中に本件と同種事故が起きてしまった場合,会社は,被害者への賠償責任を負うのでしょうか?
 また,対向歩行者が接触したのが,キャリーケースではなく,高齢者の杖や松葉杖の場合やベビーカーだったとしたら,注意義務違反の内容,過失割合の結論は異なることになるのでしょうか?

 

 機会がありましたら,改めて検討結果をお知らせしようと思います。

弁護士 荒木 邦彦

2015.10.16更新

 店で支払を済ませた客が、多く手渡された釣り銭を持ち去ったところ、後日逮捕された。このようなニュースを先日耳にしました。釣り銭が多く手渡されることは、日々買物をする中で、そう珍しいことではありません。そこで、本来よりも多額の釣り銭を受領する行為、又は、多く手渡された釣り銭を返還しない行為に関して成立する犯罪について、考えてみたいと思います。

 

 【店員から釣り銭を手渡される前に釣り銭が多いと気付いたが、黙って釣り銭を受領する場合】

 この場合、詐欺罪(刑法246条1項)が成立します。

 

 店員から釣り銭が手渡される前に、釣り銭が多いと気付いたにも関わらず、黙ってこれを受領する行為については、釣り銭が多いことを店員に告知する義務に違反することから、不作為による詐欺罪が成立します。客が告知義務に違反した結果、店員が騙されて釣銭を交付したということになるのです。

 なお、判例が不作為による詐欺を認めた他の事例としては、誤った振込による入金であることを知りながら、それを秘して預金の払い戻しを受けた事例があります。

 

 【店員から釣り銭を手渡された後、自宅に帰ってから釣り銭が多いと気付いたが、これを返還しない場合】

 この場合、詐欺罪は成立しません。

 

 刑法246条1項の詐欺罪が成立するには、店員が騙されて釣銭を交付する、という関係が必要ですが、客が釣銭を手渡された後に、自宅で多いことに気づいた場合には、この関係がありません。法律的には欺罔による処分行為がないということになります。したがって、刑法246条1項の詐欺罪は成立しません。なお、同条2項による詐欺罪も、店員による債務免除などの処分行為がありませんので、成立しません。したがって、客が釣銭を手渡された後に自宅で気づいた場合には、詐欺罪は成立しません。

 もっとも、この場合には、占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立します。
最終的に詐欺罪にならないとしても、占有離脱物横領罪にはなりますし、詐欺罪の容疑で逮捕されることはあり得ますので、多すぎるお釣りに気づいたら直ちに返還すべきことはいうまでもありません。

弁護士 平岡 広輔

2015.10.16更新

 店で支払を済ませた客が、多く手渡された釣り銭を持ち去ったところ、後日逮捕された。このようなニュースを先日耳にしました。釣り銭が多く手渡されることは、日々買物をする中で、そう珍しいことではありません。そこで、本来よりも多額の釣り銭を受領する行為、又は、多く手渡された釣り銭を返還しない行為に関して成立する犯罪について、考えてみたいと思います。

 

 【店員から釣り銭を手渡される前に釣り銭が多いと気付いたが、黙って釣り銭を受領する場合】

 この場合、詐欺罪(刑法246条1項)が成立します。

 

 店員から釣り銭が手渡される前に、釣り銭が多いと気付いたにも関わらず、黙ってこれを受領する行為については、釣り銭が多いことを店員に告知する義務に違反することから、不作為による詐欺罪が成立します。客が告知義務に違反した結果、店員が騙されて釣銭を交付したということになるのです。

 なお、判例が不作為による詐欺を認めた他の事例としては、誤った振込による入金であることを知りながら、それを秘して預金の払い戻しを受けた事例があります。

 

 【店員から釣り銭を手渡された後、自宅に帰ってから釣り銭が多いと気付いたが、これを返還しない場合】

 この場合、詐欺罪は成立しません。

 

 刑法246条1項の詐欺罪が成立するには、店員が騙されて釣銭を交付する、という関係が必要ですが、客が釣銭を手渡された後に、自宅で多いことに気づいた場合には、この関係がありません。法律的には欺罔による処分行為がないということになります。したがって、刑法246条1項の詐欺罪は成立しません。なお、同条2項による詐欺罪も、店員による債務免除などの処分行為がありませんので、成立しません。したがって、客が釣銭を手渡された後に自宅で気づいた場合には、詐欺罪は成立しません。

 もっとも、この場合には、占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立します。
最終的に詐欺罪にならないとしても、占有離脱物横領罪にはなりますし、詐欺罪の容疑で逮捕されることはあり得ますので、多すぎるお釣りに気づいたら直ちに返還すべきことはいうまでもありません。

弁護士 平岡 広輔

2015.10.08更新

 2015年9月,クロザルが撮影した写真を写真集として出版した写真家と出版社に対し,動物愛護団体が,アメリカで,クロザルの著作権を侵害しているとして訴訟を提起したとのニュースがありました。

 

 記事によると写真家であるDavid氏がインドネシア・スラウェシ島で撮影をしていた際に,野生のクロザル(絶滅危惧種)がDavid氏のカメラを奪ってガチャガチャといじっている間に,自撮りするなどしたことから,絶滅危惧種である貴重なクロザルの写真が撮れたため,それらをDavid氏の写真集として出版したところ,動物愛護団体がクロザルの撮影した写真の著作権はクロザルにあるとして訴訟を提起したようです。

 

 この件について,アメリカの著作権局では,動物が創作した作品に著作権は認められない,動物が撮影した写真は著作物ではないという見解を示しているようです。

 

 日本でも,今のところ,著作物は,人によって創作されるものであるという理解を前提としておりますので,クロザルの撮影した写真は著作物ではないという結論になりそうです。

 

 しかしながら,著作物が人によって創作されるものに限定されるのかという問題や,あるいは,動物が自撮りした画像が著作物であるとした場合に,その著作権はカメラの所有者に帰属するのかなど,今回のクロザルの訴訟では,興味深い議論が展開されそうです。

 

 今後の訴訟の推移についても見守りたいと思います。

弁護士 藤井 直孝

2015.10.07更新

 現役のプロ野球選手が、野球賭博で金銭を賭けたことを理由に、球団から謹慎処分を受けたとの報道がなされました。刑法上の賭博罪が成立する可能性もあるため、球団は警察への届出も検討しているとのことです。

 もっとも、「負けた人のおごり」との約束の下、食べ物を賭けるようなケースは、そう珍しくはないでしょう。では、野球の試合結果に関し、金銭ではなく、缶ジュース1本を賭けた場合であっても、賭博罪は成立するのでしょうか。

 

 結論としては、賭博罪(刑法185条本文)は成立しないと考えられます。

 

 賭博とは、偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為をいい、囲碁や将棋などのように、当事者の技量に差がある場合でも、偶然的要素があれば賭博にあたると解されております。

 野球の試合には偶然的要素がありますので、野球の勝敗で缶ジュースという財物の得喪を争う行為は、形式的には賭博行為にあたると考えられます。

 

 しかし、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は、日常的娯楽の範囲内であり処罰するほどの違法性がないとして、賭博罪は成立しません(刑法185条ただし書)。

 「一時の娯楽に供する物」にあたるかについては、価格の僅少性と費消の即時性の両方を加味して判断されており、一般には、その場で直ちに費消する茶菓や食事等がこれにあたると解されております。

 

 したがって、野球の勝敗で缶ジュース1本を賭けたとしても、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」にあたり、賭博罪は成立しません。

 

 なお、金銭そのものの得喪を争う場合は、その金額の多少に関わらず、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」に該当しないとするのが判例ですので、注意が必要です。

弁護士 平岡 広輔

2015.10.07更新

 現役のプロ野球選手が、野球賭博で金銭を賭けたことを理由に、球団から謹慎処分を受けたとの報道がなされました。刑法上の賭博罪が成立する可能性もあるため、球団は警察への届出も検討しているとのことです。

 もっとも、「負けた人のおごり」との約束の下、食べ物を賭けるようなケースは、そう珍しくはないでしょう。では、野球の試合結果に関し、金銭ではなく、缶ジュース1本を賭けた場合であっても、賭博罪は成立するのでしょうか。

 

 結論としては、賭博罪(刑法185条本文)は成立しないと考えられます。

 

 賭博とは、偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為をいい、囲碁や将棋などのように、当事者の技量に差がある場合でも、偶然的要素があれば賭博にあたると解されております。

 野球の試合には偶然的要素がありますので、野球の勝敗で缶ジュースという財物の得喪を争う行為は、形式的には賭博行為にあたると考えられます。

 

 しかし、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は、日常的娯楽の範囲内であり処罰するほどの違法性がないとして、賭博罪は成立しません(刑法185条ただし書)。

 「一時の娯楽に供する物」にあたるかについては、価格の僅少性と費消の即時性の両方を加味して判断されており、一般には、その場で直ちに費消する茶菓や食事等がこれにあたると解されております。

 

 したがって、野球の勝敗で缶ジュース1本を賭けたとしても、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」にあたり、賭博罪は成立しません。

 

 なお、金銭そのものの得喪を争う場合は、その金額の多少に関わらず、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」に該当しないとするのが判例ですので、注意が必要です。

弁護士 平岡 広輔

2015.10.02更新

 前回の私の投稿(平成27年9月9日の記事)ではマイナンバーについて書きましたが,最近見たニュースに関連して個人情報関連の記事をもう一つ。

 

 先日,ニュースを見ていたら,最近,亡くなられた方の遺族からの依頼で,死者が生前使用していた携帯電話やパソコンのデータを復旧させ,その中身を遺族らに引き渡すサービスが人気を呼んでいるという特集をやっていました。

 

 率直な感想としては,思い出をよみがえらせ,死者とのつながりを保ちたいというご遺族の気持ちはわかるものの,正直,自分が当事者となった場合を想像すると,(やましいことはないものの)自分の携帯やパソコン内のデータを自分のいないところで勝手に見られるというのには抵抗がありますが,全く気にならないという意見の方も多いようで,人によって意見が分かれるところのようです。

 

 ところで,こうした死者の情報を遺族が見る行為については,既に保護対象となる権利者本人が存在しないため,法律的にはこの行為が死者本人のプライバシーの侵害となることはありません。

 

 また,これと関連して死者の個人情報に関する法律上の扱いについてご説明すると,個人情報保護法においても保護の対象は「生存する個人」に関する情報とされているため,死者の個人情報は,同法によって保護される個人情報にはあたらないこととなります(その結果,遺族が死者のカルテの開示を病院に求めるようなケースでは,遺族であれば任意の開示に応じる病院がある一方,病院によっては死者の個人情報は同法で開示が義務づけられている個人情報にあたらないとの判断で,任意のカルテ開示には応じないところもあり,取扱が統一されていないようです。) 。

 

 では,こうした死者の個人情報・プライバシーについては法律上何ら保護されていないかというと,虚偽の事実を示して行われた場合に限られますが,死者に対しても名誉棄損罪は成立するため(刑法230条2項) ,ご遺族の告訴によって名誉棄損罪が成立する余地はあります。

 

 また,死者に関する情報の漏えい等によって遺族に損害を与えたといえる場合であれば,それは遺族に対する不法行為となるため,遺族が損害賠償を請求することは可能と考えられます。

 

 現代は,インターネットの普及等によって,故人に関する情報も拡散しやすく,ご遺族が不当な被害を受ける危険性も格段に高まっているのではないかと思います。
 そのような場合にも,早めに一度専門家にご相談頂ければと思います。

弁護士 横山 太郎

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