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2016.05.23更新

 先日,ある場所で職場のメンタルヘルスに関する法律問題について話をさせて頂く機会があったので,このブログでも関連する問題をいくつか取り上げてみたいと思います。

 

 昨今は書店にもメンタルヘルスに関する書籍が多数並び,「メンタルヘルス」という言葉が広く浸透してきた感があります。職場におけるメンタルヘルスの問題は,労働環境と精神疾患の関連性が認識されるにつれて政治的・社会的な取り組みが進められている分野であり,従業員を雇用する企業にとってはますます軽視できない問題となっています。

 

 こうしたメンタルヘルスに関する比較的最近のトピックが,本稿タイトルにあるストレスチェック制度の導入です。平成26年6月の労働安全衛生法という法律の改正によって,平成27年12月1日以降,使用者は毎年1回,従業員のストレスチェックを実施することが法律で義務づけられました。

(※ただし,従業員数が50人未満の事業所では当面の間努力義務にとどめられています)。

 

 既に実際の運用が開始されているところですが,本制度の概要について詳しく知りたい方は,厚労省の作成したサイト(http://kokoro.mhlw.go.jp)に制度概要や実際の問診票など豊富な資料が用意されていますので,そちらをご覧頂ければと思います。

 

 同制度の目的は,職場における自主的チェックと就労環境改善を通じて従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ごうとするものです。この点,使用者が義務を怠ることで直ちに従業員に対する責任が生じることはありませんが,今後,十分な措置をとっていない事業所において労働者がうつ病等の精神疾患を発症したような場合には,使用者の安全配慮義務違反が問われる可能性があります。

 

 そのため,従業員の心身の健康に配慮した職場環境作りによる業務改善の実現に加えて,使用者の損害賠償責任等の法的リスクを減少させるためにも,今般の法改正による制度導入には積極的に対応されることが望ましいと思われます。

 

 その他,メンタルヘルス不調に関し実際に職場で起こる問題等については,また次回以降にお伝え致します。

弁護士 横山 太郎

2016.05.18更新

 近頃,ドッグランやペット同伴可能な行楽施設が増えたこともあり,ペットが同乗している車両をよく見かけます。では,ペット同乗中に交通事故に遭い,ペットが負傷した場合,人間が負傷した場合と同様の補償が受けられるのでしょうか?

 

 最近公刊された同乗中の飼い犬が怪我をした裁判例(大阪地裁平成27年8月25日判決)とペット損害のリーディングケースといわれる裁判例(名古屋高裁平成20年4月25日判決)を参考に,2回に分けて検討してみたいと思います。

 

ペットの法的位置づけ

 ペットは,法律上,飼い主の所有物である「動産」(民法85条,86条)とみなされ,車などと同様の「物」として位置づけられることとなります。同じ生物であっても「人」とは,その位置づけが大きく異なります。

 もっとも,ペットを単なる「物」である言い切ってしまうのは,ペットが家族の一員のようにかけがえのない存在であり,生命を持つ唯一無二の存在であることに照らすと,違和感を覚えるところです。

 ペット損害に関する裁判では,このようなペットが有する実態と法的位置づけの「ズレ」をどのように解消していくのかが議論されることになります。

 

ペットの治療費は全て賠償対象となるのか?

 交通事故により車両が壊れた場合,当該車両の修理に必要かつ相当な修理費は賠償対象の損害として認められます。

 車両と同様,ペットの治療費も,当該ペットの治療に必要かつ相当な範囲の治療費である限り,賠償対象となることに争いはありません。
 上記大阪地裁の裁判例においても,実支払い治療費12万4610円全額が損害として認定されています。

 

 ところで,車両損害については,修理費が,当該車両の客観的価値を超過する場合,当該車両の客観的価値が賠償額の上限を画することとなる「経済的全損」といわれる基準が存在します。では,ペットが車両と同様の「動産」だとすると,当該ペットの治療費が事故時点における当該ペットの客観的価値を越えてしまった場合,必要かつ相当な治療費を支払っていても,当該ペットの客観的価値の限度でしか賠償が認められないのでしょうか?

 

 リーディングケースとして紹介する名古屋高裁裁判例は,まさに,この点が争点となった事例です。

 

 第一審の名古屋地裁が,飼い犬の治療費約76万円を賠償対象の損害として認定したところ,名古屋高裁は「愛玩動物のうち家族の一員であるかのように遇されているものが不法行為によって負傷した場合の治療費等については,生命を持つ動物の性質上,必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく,当面の治療やその生命の確保・維持に必要不可欠なものについては,時価相当額を念頭に置いた上で,社会通念上,相当と認められる限度において,不法行為との間に因果関係のある損害に当たるものと解するのが相当である」と判断し,当該飼い犬の購入費が6万5000円であったことを踏まえ,治療内容を検討し,治療費等のうち,13万6500円の限度で,事故と相当因果関係ある損害と認めました。

 

 認定金額については異論もあるところですが,その示した判断基準自体は,上記「ズレ」に正面から向かいあった先例的価値のある判断であったといえます(つづく)。

弁護士 荒木 邦彦

 

2016.05.12更新

 少子化と超高齢社会を迎え、いわゆる「終活」(人生の終わりのための活動)がブームになっています。「終活」の内容として、生前に死後の遺産の分配等を定めておく遺言書の作成が推奨されています。遺言書には、遺産をめぐる紛争を予防するという効果も期待でき、弁護士としても事案によっては作成をお勧めすることがあります。もっとも、ただやみくもに遺言書を作成すれば良いというものではありません。相続に関する基礎的な知識を押さえた上で遺言書を作成しないと、後に思わぬトラブルを招くことがあります。まずは相続の基礎を押さえておきましょう。

 

 相続を考える上で最初にチェックすべきは、相続人は誰か(相続人の確定)です。
 相続人になりうるのは、配偶者、子、直系尊属(父母や祖父母など、自分より前の世代で、直通する系統の親族)、兄弟姉妹ですが、誰がどのような順番で相続人になり、その法定相続分はどれくらいかは民法で規定されています。具体的には以下の通りです。

 

(1) 常に相続人になる人:配偶者。
            他に相続人がいる場合の法定相続分は以下の通りです。
            ・他の相続人が子の場合は、2分の1。
            ・他の相続人が直系尊属の場合は、3分の2。
            ・他の相続人が兄弟姉妹の場合は、4分の3。

 

(2) 配偶者のほかに相続人になる人
 ①第1順位:子。被相続人に配偶者がいる場合、子の相続分は2分の1。
 ②第2順位:直系尊属。被相続人に配偶者がいる場合、直系尊属の相続分は3分の1。
 ③第3順位:兄弟姉妹。被相続人に配偶者がいる場合、兄弟姉妹の相続分は4分の1。

 

※第1~第3順位というのは、子がいる場合は子が相続人になり、子がいない場合には直系尊属が相続人になり、子も直系尊属もいない場合には兄弟姉妹が相続人になる、という意味です。

※相続開始時に子が死亡していても、その子(被相続人から見て孫)がいれば、その子(孫)が代襲(だいしゅう)して相続人となります。子も孫も死亡していても、曾孫がいれば、曾孫が代襲して相続人となります。
※直系尊属で親等(しんとう)の異なる者の間では,親等の近い者が相続人となります。例えば、両親と祖父母が存命の場合、両親が相続人となります。
※相続開始時に兄弟姉妹が死亡していた場合、その子(被相続人から見て甥または姪)がいれば、代襲して相続人となります。なお、兄弟姉妹も甥姪も死亡していた場合、甥姪の子は代襲相続人とはなりません。
※同順位の相続人が複数いる場合は頭割り。ただし、兄弟姉妹については、父母の一方のみを同じくする者は双方を同じくする者の2分の1。なお、非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子)の相続分差別は平成25年の最高裁判例で違憲とされ、同年の民法改正で差別条項は撤廃されました。

 

図1

  

 遺言書を作成する際に、相続人になるのは誰で、その相続分はどれくらいかを念頭において作成すると、より合理的な内容とすることができるでしょう。もっとも、離婚や再婚、養子縁組など、身分関係に変動がある場合は、相続人の確定に困難を伴うことがあります。また、遺言書を作成する場合には遺留分を考慮しておくのが無難ですが(遺留分については別の機会にとりあげてみたいと思っています)、誰にどれくらいの遺留分が認められるかの判断は難しいことがよくあります。判断に迷うことがあった場合などは、当事務所にお気軽にご相談下さい。

弁護士 中田 貴

2016.05.12更新

 少子化と超高齢社会を迎え、いわゆる「終活」(人生の終わりのための活動)がブームになっています。「終活」の内容として、生前に死後の遺産の分配等を定めておく遺言書の作成が推奨されています。遺言書には、遺産をめぐる紛争を予防するという効果も期待でき、弁護士としても事案によっては作成をお勧めすることがあります。もっとも、ただやみくもに遺言書を作成すれば良いというものではありません。相続に関する基礎的な知識を押さえた上で遺言書を作成しないと、後に思わぬトラブルを招くことがあります。まずは相続の基礎を押さえておきましょう。

 

 相続を考える上で最初にチェックすべきは、相続人は誰か(相続人の確定)です。
 相続人になりうるのは、配偶者、子、直系尊属(父母や祖父母など、自分より前の世代で、直通する系統の親族)、兄弟姉妹ですが、誰がどのような順番で相続人になり、その法定相続分はどれくらいかは民法で規定されています。具体的には以下の通りです。

 

(1) 常に相続人になる人:配偶者。
            他に相続人がいる場合の法定相続分は以下の通りです。
            ・他の相続人が子の場合は、2分の1。
            ・他の相続人が直系尊属の場合は、3分の2。
            ・他の相続人が兄弟姉妹の場合は、4分の3。

 

(2) 配偶者のほかに相続人になる人
 ①第1順位:子。被相続人に配偶者がいる場合、子の相続分は2分の1。
 ②第2順位:直系尊属。被相続人に配偶者がいる場合、直系尊属の相続分は3分の1。
 ③第3順位:兄弟姉妹。被相続人に配偶者がいる場合、兄弟姉妹の相続分は4分の1。

 

※第1~第3順位というのは、子がいる場合は子が相続人になり、子がいない場合には直系尊属が相続人になり、子も直系尊属もいない場合には兄弟姉妹が相続人になる、という意味です。

※相続開始時に子が死亡していても、その子(被相続人から見て孫)がいれば、その子(孫)が代襲(だいしゅう)して相続人となります。子も孫も死亡していても、曾孫がいれば、曾孫が代襲して相続人となります。
※直系尊属で親等(しんとう)の異なる者の間では,親等の近い者が相続人となります。例えば、両親と祖父母が存命の場合、両親が相続人となります。
※相続開始時に兄弟姉妹が死亡していた場合、その子(被相続人から見て甥または姪)がいれば、代襲して相続人となります。なお、兄弟姉妹も甥姪も死亡していた場合、甥姪の子は代襲相続人とはなりません。
※同順位の相続人が複数いる場合は頭割り。ただし、兄弟姉妹については、父母の一方のみを同じくする者は双方を同じくする者の2分の1。なお、非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子)の相続分差別は平成25年の最高裁判例で違憲とされ、同年の民法改正で差別条項は撤廃されました。

 

図1

  

 遺言書を作成する際に、相続人になるのは誰で、その相続分はどれくらいかを念頭において作成すると、より合理的な内容とすることができるでしょう。もっとも、離婚や再婚、養子縁組など、身分関係に変動がある場合は、相続人の確定に困難を伴うことがあります。また、遺言書を作成する場合には遺留分を考慮しておくのが無難ですが(遺留分については別の機会にとりあげてみたいと思っています)、誰にどれくらいの遺留分が認められるかの判断は難しいことがよくあります。判断に迷うことがあった場合などは、当事務所にお気軽にご相談下さい。

弁護士 中田 貴

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