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2015.10.28更新

 近頃,「鉄道の駅構内においてキャリーバックを曳いていた者の歩行者に対する不法行為が認められた事例」という珍しい裁判例に接しました(判例時報2267号63頁)

 

 駅中や町中では,老若男女問わずキャリーバックを使用している人々をよく見かけます。

 キャリーバックは多くの荷物を少ない労力で運べる非常に便利な道具ですが,他方で,視界が及びにくい足下付近を移動するため,周囲の人にとっては見つけにくい物体であり,また,曳いている人にとっても,自身の視界外にバックが位置するため,どうしても注意が及びにくいという特徴があります。実際,キャリーバックに関連する事故が多く発生しており,国民生活センターにおいても,キャリーバック使用時の注意喚起等を行っているところです。http://www.kokusen.go.jp/kiken/pdf/294dl_kiken.pdf

 

 本件は,駅構内通路の曲がり角部分において,被告が曳いていたキャリーバックに,対向進行してきた高齢男性である原告が接触し転倒しケガを負ったとして,原告が,被告に対し,ケガの治療等を請求した事案です。

 裁判所はキャリーバックを使用した被告に対し「駅構内のような人通りの多い場所でキャリーバックを使用する場合には,曳いているキャリーバックが他の歩行者の歩行を妨げたり,それにつまづいて転倒させることのないよう注意すべき義務」があることを認め,当該注意義務違反の結果,本件事故が発生したと認定しました。

 他方,原告についても「歩行中は前方及び足下に注意し,特に駅構内のような通行人の多い場所では,対向の歩行者が大量の荷物を持っていたり,キャリーバックを曳いていることは当然予測できることである」として,本件事故における原告側過失割合を25%と認定しました。

 

 各歩行者が負う注意義務の内容は裁判例が示すとおりであろうと思います。ただし,本件判断における過失割合は,あくまでも曲がり角という視認性に問題ある場所での事故であることや原告が高齢者であることを踏まえた個別的判断であり,同種事故であっても,発生時間帯,通行量などの事故発生場所の客観的状況,キャリーバックの形状,各人の具体的歩行態様,被害者・加害者の年齢や身体的状況等によって,過失割合が大きく変わる可能性があります。この裁判をもって,直ちに,キャリーバック接触事故は,怪我をした歩行者の過失割合が低いのが当然と考えることはできません。この点,注意が必要です。

 

 なお,会社の営業マンが営業資料をキャリーケースに入れ営業先に向かう途中に本件と同種事故が起きてしまった場合,会社は,被害者への賠償責任を負うのでしょうか?
 また,対向歩行者が接触したのが,キャリーケースではなく,高齢者の杖や松葉杖の場合やベビーカーだったとしたら,注意義務違反の内容,過失割合の結論は異なることになるのでしょうか?

 

 機会がありましたら,改めて検討結果をお知らせしようと思います。

弁護士 荒木 邦彦

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