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2015.12.03更新

 養育費・婚姻費用とは,親族間の生活保持義務(自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務)の一種とされています。貧しきときも富めるときも,互いに分かち合うことが求められる義務と言えるでしょう。

 しかし,人生においては,養育費等を取り決めた当時予想もしなかった病気・リストラ・新しい家庭の形成などの出来事が生じる場合があります。そのため,養育費等を取り決めた当時と比較し,一定の「事情の変更」が生じた場合には,養育費等の減額を求めることができるとされています。

 では,どのような「事情の変更」がある場合に,減額が認められるのでしょうか。

 最近公刊された婚姻費用に関する裁判例(東京高裁平成26年11月26日決定 判時2269号16頁)は「その審判が確定した当時には予測できなかった後発的な事情の発生により,その審判の内容をそのまま維持させることが一方当事者に著しく酷であって,客観的に当事者間の衡平を害する結果になると認められるような例外的な場合に限って認められる」と判断しました。

この裁判例に基づけば
 ① 予測できなかった後発な事情の発生であること
 ② 従前の取決めを維持することが支払義務者に著しく酷な状態にあること
 ③ 客観的に当事者間の衡平を害する結果となっていること

の要件を満たす限定的な場合にのみ,減額ができることとなります。

 具体的には取決めをした当時予測できるような事情(例えば相当程度の退職金が支給される定年退職等)を理由とする減額申出は認められない可能性があります。他方で,養育費についていえば,再婚による義務者側の扶養家族増加などは,減額事由として認められる可能性があります(東京家審平成2年3月6日,山口家審平成4年12月16日等)。

 また,例えば収入が減少した場合でも,その減少幅が「著しく酷」と評価できる程度である必要であり,また,酷な状況に至ったことにつき,義務者に責めがある場合(無謀な借金,理由なき退職等)などは,減額が認められない可能性があります(福岡家審平成18年1月18日等)。

 さらに,客観的生活状況等から権利者側の生活への影響が大きいと判断される場合(例えば権利者側が無収入)にも,減額が否定される可能性があります。

 養育費等の支払は,親・夫として当然に履行すべき義務です。
 しかし離婚を急ぐあまり,拙速に取り決めてしまうと,事後的にその内容を変更することは非常に困難となります。自身のライフプランを見据えた慎重な検討・対応が必要です。

弁護士 荒木 邦彦

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